和紙の代表的な産地、福井県越前市。この地では六世紀頃に和紙づくりが始まったとされ、
現在も書道用、襖用、賞状用等、多様な紙がつくられている。
中でも楮を原料とする奉書は美しさと耐久性にすぐれることから、古代より時の権力に公文書として用いられ、江戸時代、幕府に献上される越前奉書には、「御上天下一」の捺印が許された。
その当時とほとんど変わらぬ製法で越前奉書をつくるのは九代岩野市兵衛氏のみの今、
「市兵衛奉書」は越前和紙のみならず和紙全体の価値を世界に証明する役割を担っている。

『私の父親である八代岩野市兵衛は次男でした。普通は長男が家を継ぎますが、長男は体が弱くて分家をしたんです。ところが、父親は戦争でシベリアに抑留されてしまい、戦後、家の仕事は私の母と長男の叔父さん夫婦で細々とやっていました。終戦の年、私は小学校五年生で、体も大きいほうでしたので、学校から帰ると手伝いをさせられました。
父親が帰ってきたのは私が中学一年のときです。体の大きい頑丈な人だったのに痩せ衰え、半年ぐらい仕事はできませんでした。回復すると今度は東京でたくさん注文を取ってきて、ものすごく忙しくなりました。
職人の仕事は叱られて上手になるといいますが、うちは違いました。父親は声の大きい人でしたが、仕事で怒鳴られたことは一度もありません。何かうまくいかないと「こうしたらいい」と教えてくれました。そのかわり、父親にも叔父さんにも「ごまかすな」「手抜きをするな」と何回も言われました。私の家は代々頑固な性格というか、曲がったことをしない。私もよその人から「おまえの性格、親父にそっくりやな」「喋り方も一緒やわ」と言われます。』
そんな人間国宝の岩野さんが丹精込めて作る越前和紙は、世界最大規模の来場者数を誇っている
ルーヴル美術館に、収蔵品の修復用として納められています。
薬品をほぼ使わずに、緻密な工程をへて漉かれる紙は均一な厚みで、耐久性と保湿性に優れる。
ルーヴル美術館が世界中の紙を集めて比較したなかで、岩野さんの紙が選ばれたそうだ。

さらに今日では、音響メーカーのスピーカー部品に使用されたり、越前和紙を生かした和紙繊維に抗菌消臭の効果が認められてその繊維が宇宙滞在用被服に採用されたり、岩野さんの父…八代目が作った和紙を、あのピカソも愛用していたとされる世界的な評価が高い
越前和紙。
ただの「用紙」の枠にとどまらない、幅広い分野のものづくりを支える高機能素材となっている。
- 越前和紙の歴史と多様な用途: 福井県越前市では六世紀から和紙作りが始まり、書道用や襖用など多岐にわたる用途で長い伝統を持っている。
- 越前奉書の歴史とその重要性: 楮を原料とする奉書は古代から公文書として利用されており、江戸時代には幕府に献上され、「御上天下一」の捺印が許された。唯一九代岩野市兵衛氏が今も生産を続けている。
- 岩野市兵衛氏の和紙作りの伝統と家族の物語: 岩野市兵衛氏は父親の戦後の苦難を支え、伝統的な和紙製法を守り続け、家族の絆と職人精神を継承している。
- 岩野氏の和紙の世界的評価: 岩野氏が丹精込めて作る越前和紙は、耐久性と保湿性に優れ、ルーヴル美術館に収蔵されるなど世界的に高く評価されている。
- 越前和紙の革新と多方面の応用: ピカソも愛用したとされる越前和紙は、音響部品や抗菌性素材としても利用され、伝統的な枠を超えた高機能素材として新たな価値を創造している。
越前和紙の革新と現代での用途はどのように広がっていますか?
越前和紙はピカソも愛用したとされ、音響部品や抗菌性素材としても利用され、伝統的な枠を超えた高機能素材に変貌しています。これにより新たな価値と用途が生まれています。
岩野氏の和紙は世界的にどのように評価されていますか?
岩野氏の越前和紙は耐久性と保湿性に優れており、ルーヴル美術館に収蔵されるなど世界的に高く評価されています。伝統的な製法と緻密な工程により、品質の高さが認められています。
岩野市兵衛氏の和紙作りの伝統と家族の物語は何ですか?
岩野市兵衛氏は戦後の苦難を家族とともに支えながら、伝統的な製法を守り続け、家族の絆と職人精神を継承しています。彼の努力により、和紙の価値を世界に示す役割も担っています。
越前奉書の歴史とその重要性について教えてください。
楮を原料とする奉書は古代から公文書として使われ、江戸時代には幕府に献上され、「御上天下一」の捺印が許されていました。現在も九代岩野市兵衛氏だけが製造を続け、その高品質で知られています。
越前和紙の歴史と伝統的な用途は何ですか?
越前和紙は六世紀頃に福井県越前市で始まり、書道用、襖用、賞状用など多岐にわたる用途で長い歴史と伝統を持っています。